どうも。宮城県北のウェブライター、ささキジと申します。
この記事では、私が実際に宮城の県北で体験した“ガチの怖い話”を記していきます。
※地域への配慮から、人物や場所の特定を避けています。
ー 暗闇って、怖い? ー
「うん。寝るとき怖いもん」
と、子どもが答える。
たしかに私も小さい頃は、真っ暗な中で眠るのが怖かった。
電気を消すなんて、正気の沙汰じゃないと本気で思っていた。
けれど今の私は、もう暗闇を怖いとは思わない。
…というより、“本当の暗闇”を知ってしまったからだ。
さかのぼること16年前、私は19歳。
新卒で入った会社を早々に辞め、リーマンショックをただ嘆くだけで、何も行動できない――そんな人間だった。
その後もなんとなく就いた仕事を一年も続けられず、また退職。
とはいえ、当時の彼女に対して「こんな自分で申し訳ない」と思うくらいの人間力は、かろうじて残っていた。
だからこそ次の仕事こそは、まともに働こうと決意した。
蝉の声が響き渡る蒸し暑い夏。
とある製造業の派遣業務の求人を見つけた。
未経験ながらもそこそこの給料、正社員登用のチャンス。
ダメ元で受けた面接でなぜか採用された私は、運にすがるような気持ちで新たな一歩を踏み出すことになる。
働き始めて1カ月も経ったころだろうか。系列会社の別工場へ移動になった。
その工場がいわくつきの場所だった…というオチもなく、私は夜勤と日勤を交互に繰り返し働いていた。
とある夜勤の日に”それ”は起きた。
深夜4時の休憩。
体に張り付くようなシャツに気持ち悪さを感じながらもタバコを吸うため外へ。
ドアを開けた瞬間に見える星空。
(あー。明日も暑くなりそうだ)
と思いながらドアを閉める。
その瞬間今まで聞こえていた虫の声がすべて消えた。
「ん?あれ?え?」
音が消えたことの驚きと同時に、強烈な違和感を感じた。
こんなに暗かっただろうか。いや、そんなはずはない。
ドアを開けたときに星空が見えたはず。明日も暑くなりそうだなんて思っていたはず。
暗いという表現では説明しきれない。
まるで自分ごと深い黒で塗りつぶされたような暗さ。
体を動かしている感覚はあるが、どの方向に向けて動かしているのかが全く分からない。
自分が存在しているのかも疑いたくなるような暗闇。
感覚的には振り返っているのだが、ドアが見つからない。
暗いだけじゃない。“どこにも繋がっていない”感じがする。
声は出せるし、自分の声も聞こえる。これがなんとも気持ちが悪い。
想像してみてほしい。
自分”だけ”の声しか聞こえない。自分の服が擦れるような音など、声以外の音が一切ないのだ。
それだけではない。汗がシャツに張り付くような暑さも感じない。
状況を整理したその瞬間、痛烈な恐怖が襲ってきた。
あまりにも非日常すぎて、脳が恐怖を処理しきれていなかったのだろう。
(どうするどうするどうする。やばいやばいやばいやばいやばい。本当にやばい)
怖さに耐えられなくなりしゃがみ込む私。
その時
「チッチッチッチッチッチ」
突然聞こえた自分の声以外の音に驚く私。
気づくと、きれいな星空。蒸し暑さを物語るような虫の声。そしてしゃがみ込んでいる私。
そう。光と音が元に戻っていた。
時間にして数分の感覚だったのだが、携帯を確認したところ時間は経過していなかった。
この体験は一度きりだったのと、場所がよくないところだったわけでもないと思う。なぜこのようなことが起きたのかもわからない。
だからこそ、今も私は“暗闇”が怖い。
……それが、いつまた始まるかわからないから。
ということで終わりです。